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おばさんの井戸端ジェンダー       『おしゃべり力』をつけよう

サウナ風景 イラストby白六郎 近くのスポーツクラブに通い始めて1年ちょっとたちます。
わたしは水中ウォーキングとビート板につかまってバタ足をちょこっとするだけなので、あまり筋肉はついてくれません。けれど、思わぬいいことがありました。
それは、おばさんたちのおしゃべりです。

サウナ室や更衣室は、おばさんたちの元気なおしゃべりで満ちています。
北陸を旅行してきたのよ。今年は暖かい秋だったから紅葉はいまひとつだったけれど、永平寺だけはきれいだったわ
聞いている方も少し旅の気分が味わえます。

バスタオルを巻いたおばさんが、サウナ室で満足そうに喋ります。
「ここはいいわねえ。プールで泳いでもいいし、歩くだけでもいいし、元気な人はジムでトレーニングできるし。こういう施設を、国や市が作ればいいのにね。病院がサロン化しているといって、医療費を上げたけれど、ほんとに意地が悪いわ。病院へ行かないでいいように、税金を使ってよね」
・・・まったくその通りですね。

78才というS子さんはたくさんのおしゃべり友達がいていい笑顔をふりまいています。彼女は姑・舅の介護を6年間したあと、夫を4年間介護して看取り、70才で自由になったと言います。背は曲がったけれど、5年前に水泳を始め、今はどこも痛いところがないそうです。毎日スポーツクラブに通い、一日にシニアスクールとアクアビクスの2つをこなすこともあります。わたしには真似できそうもありませんが、元気な彼女と話していると、楽しくなります。

サウナを出、バスタオルを巻いたまま「日本語」を勉強している女性もいます。わたしは彼女から韓国語の「アンニョンハセヨ」(こんにちは)「カムサハムニダ」(ありがとう)などを教えてもらいました。
ある日、街を歩いていたら、前から短いスカートをはき自転車に乗ったかっこいいお姉さんがやって来ました。わたしににっこり笑いかけるので、よく見たら勉強熱心な彼女でした。「今、仕事中なの」と言いつつ、ちょっとお喋りしてから別れました。

おばさんたちは知らない人にも気さくに話しかけてきます。こちらが分からないことを聞くと、ニコニコしながらくわしく教えてくれます。いいなあ・・・。
水中ウオーキングしながら戦時中の体験や、自らの経てきた人生の山や谷を、力まず風が流れるように話してくれる女性もいます。
ああ、「おしゃべり」ってなんていいんだろうと思うこのごろです。

ところが、男性はそうではないようです。男性更衣室もサウナも静からしいです。
なんか、つまらないというか、もったいないというか。辛淑玉さんのいわく、
「沈黙は金、雄弁は銀、男は黙ってサッポロビール」なのでしょうか。

認知症の妻を夫がひとりで抱え込み、果てには火葬場で心中するという事件がありました。しんどい介護生活を、もっと人に「おしゃべり」していたら、あそこまではいかなかったのでは、と思います。
日本男性の自殺率の高さは、おじさんたちが「沈黙」していることが一番の原因のような気がします。

少女や少年がいきなり刃物で友人や親を殺傷する事件も続いています。でも、もっと彼らが友達と「おしゃべり」していたら、結果は違っていたのではないかと思います。パソコンの画面に自分の感情ばかりをぶつけていたら、「被害者意識」が増幅されはしないでしょうか。
頭にきたことや辛いことは、喋ればけっこう軽くなるし、「なんだあ、思いちがいだった」と気づくこともあります。ひとりで悩んでいたら、それこそ人生の袋小路にはまってしまいます。

おじさんと子どもたち! もっと『おしゃべり力』をつけましょうよ、ちゃんと生身の人間と会話して。  (つ)

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